
台湾及び韓国におけるスポーツくじに関する調査報告
本協議会では、海外におけるスポーツDXの最新動向やスポーツ産業の実態調査を行っております。この度、台湾及び韓国で行われているスポーツくじについて調査を実施しましたのでご報告いたします。
■調査概要
台湾については、2023年3月2日から4日にかけて現地を訪問して関係者にヒアリング。韓国については、調査を委託するとともに、関連する文献等に当たり情報を収集。
■訪問先(台湾)
・Lin & Partners恆業法律事務所:ゲーミング分野にも精通した台湾の大手弁護士事務所
・TSLC(Taiwan Sports Lottery Co., Ltd.:台湾運動彩券公司):台湾スポーツくじのオペレーティング会社
・国立陽明交通大学IAPS(Center of Industry Accelerator and Patent Strategy):台湾のアクセラレーター大手(スポーツDX関連もあり)
■調査委託先(韓国)
・Lin & Partners恆業法律事務所(再掲) ※韓国のスポーツくじ制度にも精通
■総括
【台湾:2023年3月現在】
✓ 一義的にはスポーツ振興やアスリートの育成・強化等のための資金(スポーツ発展基金)確保を目的としてスポーツくじが導入されたが、違法な地下ギャンブル対策としての側面もあり、政府からは商品の魅力向上など積極的なビジネス展開が要請されている。こうした中、固定オッズ制を採るなどの工夫が行われている。
✓ スムーズな制度導入のため公益くじの1類型としてスタートしたが、公益くじのスキームでは、①実際の試合や競技会を対象とするスポーツくじを運用するにはガバナンスが脆弱で、②銀行がオペレーターゆえリスクテイク型の事業を積極展開することが難しく、ゆえに単独制度化された。いずれにしても、くじをベースに発展を遂げており、市場規模は2,600億円超にまで成長。オンライン販売が約3分の1を占めるが、弱者や引退選手の雇用の場として店舗も重要。
✓ 銀行とテクノロジー企業が合弁で専門のオペレーティング会社を組成し、これを中心にコンソーシアムを組む構成となっているほか、システム面では海外企業に依存している。制度化に際し、オペレーターやシステムプロバイダーを補う必要があった。
✓ 欧米に比べ、インテグリティ確保や依存症対策に関する取組は緩いと言える。一方、スポーツくじから違法ギャンブルへの顧客の還流抑止も重要であり、魅力を削ぎかねない規制色の強い措置は打ち出しにくい様子も伺われた。
【韓国:2023年6月現在】
✓ 国民体育振興公団(KSPO)がスポーツくじの発行事業体ではあるが、事業自体は民間へ委託することとされ、現在はSports Toto Koreaが受託。当選金払戻のため銀行も参画。
✓ 対象スポーツはサッカー、野球、バスケットボール、バレーボール、ゴルフで事実上固定。サッカーが60%、野球とバスケットボールを合わせた3種で95%超を占める。
GDP比をベースに粗利(GGY)に上限を課す総量規制が行われているが、市場は少しずつ成長を続け、2021年には6,000億円を超える規模に。オンライン販売は約1割。
✓ くじの対象は、①勝敗や引き分け等の試合結果、②得点・失点、③その両方、④優勝者・順位・得点選手等、の4種。くじ自体は払戻方法により次の2商品に分けられる。
・toto:パリミチュエル方式で払戻率は50%。2021年のシェアはprotoの92%に対し8%。
・proto:固定オッズ方式で、払戻率は50~70%であり、インゲームくじも可能。
✓ 2007年設立の射幸産業統合監督委員会(NGCC)の統率下、ゲーミング産業全体を対象とする上記の総量規制のほか、販売事業者、試合主催者、オペレーターが取るべき不正対策、韓国賭博問題予防治癒院(KGPA)による依存症・問題ギャンブルへの取組が制度化。
✓ オペレーターへの委託運営費は10%以下に抑えられ、これと払戻金を除いた、売上の約30%が国民体育振興基金に納付されている。売上の0.35%相当は「ギャンブル依存症予防・治療負担金」として同基金のNGCC管理の勘定に充当され、KGPAの活動支援等に。
※台湾・韓国それぞれのステークホルダー構図については別添をご参照下さい。
公表日:2023年8月10日